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不動産投資の2023年問題・2025年問題についてとその対策
2023年問題、2025年問題をご存じでしょうか。両方とも今後の不動産投資を左右する重要な問題です。それにもかかわらず詳細を知る人は多くはないようです。そこでこの問題にある背景とその対策について考えてみたいと思います。
2023年問題、2025年問題とは
2023年問題とは、この年に日本の世帯数がピークを迎える問題です。また2025年問題とは、この年に団塊世代が後期高齢者となる問題と大阪万博開催に伴う問題です。この三つは密接に関係しているので併せて考える必要があります。
2023年問題=日本の世帯数がピークを迎える問題
国土交通省の資料によると日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに人口減の時代に突入しました。2048年に1億人を割り込み、2060年には8,674万人まで減少すると推計されています。
ところが世帯数については、現在も増加が続いています。2015年では5,333万世帯でしたが、2023年には5419万世帯まで増加する見込みです。しかし、国立社会保障・人口問題研究所は、この時点が世帯数のピークで、2040年には5076万世帯まで減ると推計しています。世帯数が減少すれば住宅需要も右肩下がりとなり、不動産価値が下落することもあり得ます。これが2023年問題です。
団塊世代が後期高齢者となる問題
この世帯数の減少には、2025年問題の一つである、団塊世代が後期高齢者となることも大きく関与しています。団塊世代とは、1947年から1949年の間に生まれた人たちです。その合計出生数は約806万人で、日本の人口ピラミッドの中で大きな割合を占めています。そして団塊世代のすべてが75歳のいわゆる後期高齢者となる2025年には、75歳以上の人口が全体の約18%を占めることになります。
これは全世帯数の中で高齢世帯(65歳以上)の割合が増加することを意味します。同研究所の推計によると、2015年から40年の間に世帯主が65歳以上である世帯は1918万世帯から2242万世帯になり、そのうち75歳以上の世帯は888万世帯から1217万世帯に増加します。また、全世帯主に占める65歳以上の世帯主の割合は36.0%から44.2%となり、その中で世帯主が75歳以上となる割合は46.3%から54.3%に増加します。世帯主が高齢者になれば介護施設に入所するなどで、賃貸住宅の空室や一戸建ての空き家が目立つようになるでしょう。つまり、世帯数が減少に転じる2023年問題に、さらに拍車をかけてしまうのが、団塊世代が後期高齢者となる2025年問題なのです。
地域格差にも考慮する必要が
不動産投資家であるならば、この2025年問題の対応については、日本の地域格差も考慮する必要があります。国勢調査(2020年)の結果を確認すると、都道府県別の65歳以上の人口割合は、秋田県がもっとも多く37.5%、次いで高知県(35.5%)、山口県(34.6%)と続いており、45道府県で25%以上となっています。一方で割合がもっとも低いのは沖縄県で22.6%、次いで東京都(22.7%)、愛知県(25.3%)と続いています。
また、2015年から2020年の都道府県別の人口減少率をみると、高い方から秋田県(-6.2%)、岩手県(-5.4%)、青森県(-5.4%)となっており、39道府県で減少しています。つまり、日本には47の都道府県がありますから、人口が増加しているのは8都県ということになります。具体的には、増加率の高い方から東京都(3.9%)、沖縄県(2.4%)、神奈川県(1.2%)、埼玉県(1.1%)、千葉県(1.0%)、愛知県(0.8%)、福岡県(0.7%)、滋賀県(0.0%・694人増)となっています。
このようなことから、今後の不動産投資市場は、地域格差がより拡大することが予想されます。要するに高齢者の割合が多く、人口も減少傾向の地域においては、今まで以上に苦戦を強いられるケースが増えていくでしょう。一方で東京都をはじめとする都心部では、比較的2023年・2025年問題を避けられる可能性が高いといえます。
大阪万博開催に伴い地価が上昇する可能性も
もう一つの2025年問題は、大阪万博の開催に伴うものです。問題といってもこちらはマイナスに捉える必要はありません。万博の開催は、オリンピック同様に会場周辺のインフラ整備などによって近隣地域全体の地価が上昇する可能性が高まります。このことも2025年問題といわれているのです。
では、実際にどのような整備が行われるのか解説しましょう。2021年8月27日、国土交通省は第2回国際博覧会推進本部において2025年に開催される大阪万博のインフラ整備計画を決定しました。
「インフラ計画の5つの柱」
1.会場周辺のインフラ整備
「会場周辺の基盤整備」「道路や鉄道整備」「物流機能の強化」など。
2.会場へのアクセス向上
「道路や鉄道のバリアフリー化」「会場への歩行者や自転車によるアクセス機能強化」など。
3.安全性の向上
「南海トラフ巨大地震対策」「台風等による浸水対策」「テロ等に備えた保安対策」など。
4.にぎわい・魅力の向上
「魅力ある公共空間づくり」「歴史観光資源や和食等豊かな文化資源などとのネットワーク強化」など。
5.広域的な交通インフラの整備
「関西圏の環状高速道路ネットワークの形成」「夢洲、新大阪、関西3空港への鉄道アクセス強化」など。
具体例としては、大阪メトロ中央線の延伸や関西国際空港の国際線キャパシティ拡大、大阪駅周辺の無電柱化などが計画されています。
地域の二極化を見極めて早めの決断を
以上のように2023年から2025年にかけては、不動産市場の縮小が予想されています。それでも東京圏や大阪圏を中心に現在と変わらず活況を呈するエリアも存在するでしょう。不動産投資家は、この二極化をよく見極めて、売買に対する早めの決断をすることをお勧めします。
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