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相続登記が義務化に! 不動産投資家が押さえるべき注意点を解説

不動産投資をしばらく続けていると、相続が気になる人も多いのではないでしょうか。不動産は資産価値が高いので、相続時もさまざまな揉め事の原因になることが多々あります。そのような中、2024年4月1日より相続登記が義務化されます。そこで投資家が押さえるべき注意点を解説します。

所有者不明土地の定義

従来、不動産の相続登記は任意で、登記をしないことも珍しくはありませんでした。その理由は、相続の場合は登記をしなくても第三者に対抗できるからです。

しかし、このことが大きな問題の原因となりました。それは所有者不明土地の増加です。国土交通省では、所有者不明土地を次のように定義しています。

「相続登記がされないこと等により不動産登記簿等を参照しても所有者が直ちに判明しない、または所有者が判明しても所有者に連絡がつかない状態となっている土地」

所有者不明土地が生まれる背景

このような土地が生まれる主な要因は、前述のように相続で土地を取得した場合の登記が義務付けられていないからです。その結果、一般社団法人 国土計画協会によると、所有者不明土地は日本の土地の約20%(約410万ヘクタール)を占めるとされています(2017年現在)。これは九州(368万ヘクタール)を上回る広さです。しかもその割合は増加傾向で、2040年には約720万ヘクタールに達し、北海道(約834万ヘクタール)に迫る面積になる見込みです。

所有者不明土地の増加には少子高齢化も大きく関係しています。土地の所有者が亡くなった時点で相続人が遠方に住んでいて、その土地を利用する予定がないといったケースでは、相続登記をしてしまうと固定資産税や都市計画税の納税義務が発生しますし、管理の手間もかかります。ですから相続登記をしないまま世代交代が進み、やがて「所有者が直ちに判明しない」または「所有者が判明しても所有者に連絡がつかない」状態となってしまうのです。

東日本大震災などをきっかけに相続などの登記が義務化に

所有者不明土地は以前から存在していましたが、その問題が全国的に知られるようになったきっかけは東日本大震災です。復興庁の資料によると、岩手県、宮城県、福島県の復興用地の取得率は、2013年9月時点で48%でした。震災発生後2年半経っても予定の半分の土地しか確保できていなかったのです。この大きな要因が所有者不明土地でした。その後の九州における熊本地震や豪雨災害の際でも、所有者不明土地は復興事業の大きな障害になったといわれています。

これらを背景として2024年4月1日から相続登記が義務化されます。さらに2026年4月までには住所や氏名などの変更登記も義務化されることになります。具体的には次のようなケースの該当者は登記を行わなければならなくなります。

  • 土地を相続した人
  • 転居した不動産所有者
  • 結婚や離婚などで姓が変わった人
  • 商号や本店所在地が変わった不動産所有者である法人

それぞれの登記を行う期限は以下になります。

相続人

相続を知り、かつ相続により不動産を取得したことを知った日から3年。

相続人以外の人と法人

住所や名称などの変更があった日から2年。

上記の期限内に登記を行わなかった場合は、過料を科せられることがあります。金額は相続については10万円以下、その他については5万円以下です。とはいえ、刑事罰ではないので逮捕されるようなことはありません。
なお、現在でも次のようなケースでは登記義務があり、違反すると同様の過料に科せられることがあります。

  • 土地の地目や地籍を変更した場合
  • 建物を新築または増築した場合
  • 建物を滅失した場合
  • 法人の登記事項に変更があった場合

不動産投資家が押さえるべき注意点

「相続なんてまだまだ先の話」。不動産投資家の中にはそう考える人も多いでしょう。しかし、今回の義務化については、次のような不動産投資家ならではの注意点があります。

登記漏れにも過料の可能性

今現在所有している土地についても義務化は対象となります。したがって、現時点で相続登記や住所変更登記が漏れていると2024年4月以降は違反となります。できるだけ早いうちに登記漏れがないか確認しましょう。

自身の住所や氏名が変更になった際は必ず変更登記

住所や氏名が変更になった際は、変更義務が発生することになります。特に複数の物件を所有する投資家は、手続きが煩雑になるので注意が必要です。

不動産管理会社を移転した際の変更登記

不動産管理会社を経営している投資家は少なくないでしょう。この中で自宅を会社の所在地としている場合は、引越しをした際に法人の変更登記も行わなければなりません。

今のうちに行っておいた方が良いこと

投資家が所有する土地の中には、利益を生まないお荷物的存在の物件もあるでしょう。それでも2024年から相続人は、相続登記しなければならないので登記費用を支払い、固定資産税などを毎年納税することになります。このような負担を相続人にかけないために今のうちに資産の組み換えを行っておくのが得策でしょう。また、相続についての登記の期限は3年間ありますが、遺産分割協議で揉めてしまうと結論が出ないままこの期間が過ぎてしまうことも珍しくはありません。ですからスムーズな相続を行うために誰もが納得する遺言書を残しておくことも重要です。

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